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電気通信大学 共同研究センターメール No.13 巻頭言

教官と兼業
−産学共同研究に関する規制緩和について−

共同研究センター長 教授 御子柴 茂生

社会への貢献も大学の使命

大学の使命が変ってきている。従来は「教育」と「研究」が主であったが、「社会への貢献」がクローズアップされてきた。研究予算を倍増しよう、という政府の科学技術基本計画が実現すれば5年間で17兆円が投じられることになるが、この計画には社会経済の活性化と国民福祉の向上のため、大学が広く民間企業に貢献できるような内容が盛り込まれている。この計画の中で、読者に関係深いと思われる内容を御紹介しよう。

もはや、教官=清貧、の式は成り立たない

仮にA社があったとする。この社は音質を改善した携帯電話の開発を考えているが、技術的に自力ではできない。このような場合、A社は大学の教官に共同研究を依頼すればよい。これでも不十分な場合は、教官に大学の仕事が終わった後、音質の仕事に携わってもらう。
実は、国立大学の教官は今迄企業との兼業が強く規制されていた。ところが平成9年4月から、上の例のように正規の勤務時間外ならば民間企業でも働くことができるようになった。ただし、何の仕事をしてもよいというわけではない。企業の経営に参画してはいけない。従って自分の会社を設立してはいけない。教官の専門的知識を社会に有効活用できることが、兼業の条件である。言うなれば、既存の技術を応用した実用化研究・開発、あるいは技術指導も可能となったわけである。企業に出かけていき、そこの設備を用いて共同研究をすることもできる。
定時後企業で行う研究は大学の業務と離れた仕事であるから、企業は教官に給料を払う。つまり教官は本業と別に個人的収入を得てもかまわないのである。各教官の勝れた能力を教育・研究だけに生かすのみでなく、社会にも還元しつつ、同時に経済的余裕も得られてはいかがであろうか。
米国の大学では、教官が民間企業のコンサルティングをすることを50年以上も前から勧めており、工学部では30%程度の教官がコンサルタントを兼務しているそうである。これは、教官が象牙の塔に閉じ篭ることなく、社会と係わりを持ち続けると同時に、研究費を導入するためでもある。日本でも技術面でのコンサルタントが許されたわけである。日本にも、アメリカのように自家用飛行機を持つことのできる教官がいても良いのではないか。このような教官に指導を受けたい、と思う学生もいるであろう。小職は、教官が清貧であるのも悪いものではないと思う。したがって、自分は、「清」はともかく「貧」である。しかし、全員に清貧であることを願う気はさらさらない。

企業にも特典

兼業をするためには、企業と共同研究体制をとったほうが実行し易いことが多い。共同研究により企業の受けるメリットには、経済的効果、研究のリスク分散、外的知識の導入などがある(共同研究センターメール、No.12、平成9年6月20日発行を参照されたい)。企業にはさらに特典がある。共同試験研究促進税制が導入され、大学に支払った共同研究費の一部を税金控除の対象とすることができるようになった。このように共同研究は文部省、通産省、大蔵省などがこぞって推奨しているのである。

共同研究費 vs. 奨学寄付金

国立大学では、共同研究よりも奨学寄付金の受け入れ件数の方が圧倒的に多い。この理由の1つは、共同研究を始めるには手続きに時間がかかり、また共同研究費が使いづらかったためである。奨学寄付金は学長に交付、経理を委任されるため、次年度への繰越しに関する制限はない。ところが共同研究経費は国の歳入歳出予算として扱われるため、会計年度独立の原則という制約がある。
反面、奨学寄付金は、その多寡が教官の企業への寄与度を必ずしも現わしておらず、従って大学、あるいは教官の社会に対する貢献度の指標とはあまりとらえられていない。一方、共同研究は社会に対する貢献であり、関連する分野での教官の研究成果を同時に示すと見做されるため、大学の評価資料として用いられ、また政府から資金援助も得られる。たとえば共同研究費が2,420,000円を超える場合には、文部省から百万円程度の補助をこの額に追加されることがある。

「一方三両損」が「三方一両損」に

この場合の「両」は、金額ではなく苦労の量を示している。従来、共同研究費の使い勝手は悪かった。共同研究開始時には予め予算を研究費、旅費、および謝金に振り分けるが、この比率を変えることが困難であり、教官が大変な苦労をしていた。一方三両損である。しかし産学共同研究推進の流れに沿って、文部省および本学事務方から今迄以上のご協力を戴けることになった。三者で少しづつ苦労をしよう、ということである。止むを得ず予算の配分を変更したいときは、十分時間的余裕を以て庶務課企画調査係に申請していただけばよい。ただし、事務方の仕事量の増加を極力少なく抑えるため、小額の変更は御遠慮願いたい。

共同研究員派遣負担が無くなった

共同研究を実施する際は、企業から共同研究員を派遣していただいていた。しかし、毎日を仕事に追われている企業にしてみれば、これがかえって負担になることが多かった。本年度から、必ずしも共同研究員を派遣する必要はなくなった。

予算の繰越は

共同研究経費は国の財政制度により単年度予算として扱われる。したがって年度内に消化せねばならない。実は次年度繰越も可能なのであるが、文部省や大蔵省の承認手続が必要である。

具体的手順は

上記のいずれを行うにしても、教官が勝手にやることは許されず、しかるべき承認が必要であり、学内庶務課や会計課などのお世話になる。どのような手順をふめばよいのか、以下に説明をお願いした。

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産学共同研究の実施に関する説明
電気通信大学 庶務課  電気通信大学 会計課

共同研究の申し込み

企業が大学との共同研究を望む場合は直接、関連テーマを研究している教官に申し込む。もし、どの教官に申し込んでよいか判らない場合は、
電気通信大学共同研究センター 科学技術相談窓口 田口 幹 助教授
電話: 0424-83-2161、内線4781 FAX: 0424-80-4987
e-mail:taguti@crc.uec.ac.jp
に相談する。窓口は関連の研究を行っている教官を企業に御紹介する。この教官と話し合いの結果、合意に達すれば共同研究を始める。具体的手続きとしては、まず大学からお願いする共同研究申込書に記入していただき、その後契約書を取り交わす。この契約書には、知的所有権の保護などについて詳細に規定されている。文部省への手続きは大学が行う。共同研究のために大学に支払う金額は、共同研究の規模にもよるが、年間百万円から三百万円のものが多い。金額が多いほど、大学が共同研究に費やす経費と時間も多くなり、従って成果も大きいと考えてよい。

兼業について

国家公務員が民間企業等で兼ねて勤めることを「兼業」という。従来この兼業は「学術上有益な」、あるいは「国際交流促進のための」研究・開発、等が許されていた。これが、平成9年度から「産学の連携・協力を図る目的とする法人等の職を兼ねる」ことも許可されるようになった。すなわち、勤務時間外に企業において、研究開発または研究開発に関する技術指導に従事する場合の兼業については原則として許可されることとなった。
兼業を行うには、事前に教官が庶務課人事係に兼業申請書と勤務時間の割り振り表とを提出し承認を得なければならない。それには次の制約がある。兼業が本務に支障を来たしてはいけない。兼業先への通勤時間も本務にくいこんではならない。また、企業との間に利害関係が生じ、その結果公務員の信用が損なわれるようなことがあってはならない。兼業は透明性の確保から公表される。
なお、国立大学教員が企業との共同研究に参画するため休職した場合には、退職手当て算定上の不利益を被らないよう措置が講じられている。

共同試験研究促進税制について

共同試験研究促進税制の創設により、企業は大学に納付した共同研究費の内、原則として大学が支出した経費の6%相当額に対し、法人税額控除の対象とすることができる。大学に対し「共同試験研究促進税制に係る支出報告書」の発行を求め、契約書の写しを添付して税務署に提出すればよい。

共同研究経費の科目別内訳について

当初の共同研究経費の科目別内訳(研究費、旅費、謝金)を変更する必要が生じた場合には、教官が庶務課企画調査係にすみやかに相談する。

共同研究経費の次年度への繰越

共同研究経費は単年度予算であるが、次年度に繰り越す必要が生じた場合には、次の手続きにより申請する。

  1. 教官が庶務課企画調査係に計画変更申請書を提出
  2. 会計課司計係が大蔵省および文部省に繰越承認申請等を行う
  3. 文部省から次年度繰越示達

ただし、この手続きには、研究等に際しての事前調査又は研究等の方式の困難、研究等の計画変更その他のやむを得ない事由が必要であり、単に年度末に執行残が出たような場合には認められない。

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