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電気通信大学 共同研究センターメール No.35 巻頭言

承認・認定TLO

共同研究センター長 教授 森崎 弘

大学における産学官連携の重要性が過去に例を見ないほど高まっている中、TLOの役割が注目を浴びている。ご承知のように、TLOとは、Technology Licensing Organization(あるいは、Office)の略で、米国で最初に考案された、大学の技術を産業界に技術移転するための組織である。大学で生み出された発明を特許化し、これを企業にライセンスすることによってロイヤリティ収入を得て、これを発明者、大学、TLO自身に配分する仕組みである。日本では、平成10年に大学等技術移転促進法が施行されて、正式に経済産業省(当時の通産省)、文部科学省(当時の文部省)の両省から承認を受けたTLOが設立されるようになった。国立大学は法人格を持たないので、国立大学の教官による発明は国に帰属するか個人に帰属するかのどちらかであり、この判定を大学内の発明委員会が行っている。承認TLOは、このうち個人に帰属すると認められた発明の譲渡を受け、特許化して技術移転する。これに対して、国有特許の譲渡を受けて技術移転することが文部科学省から認定されたTLOを、認定TLOと呼ぶ。
本学の教官と卒業生が出資して平成11年に設立された、(株)キャンパスクリエイトは、本学と社会の連携を促進するリエゾン業務を中心に、大学の教育、研究及び社会貢献に関わる幅広い活動を支援することを目的に独自の活動を続け、多くの実績を上げて、産業界や他大学からも注目を集めてきた。地方自治体や地域住民と大学との交流にも貢献している。それらの実績が関係省庁から評価され、本年2月に、承認・認定TLOとして登録された。承認TLOとしては全国で29番目、認定TLOとしては3番目である。
日本国内ばかりでなく世界的にも多くのTLOが設立され大学の技術移転に関わる業務を行っているが、十分に収益を上げている組織はあまり多くないと言われている。その中で(株)キャンパスクリエイトが黒字経営を続けているのは、その優れた経営戦略によるところが大きい。特許による技術移転だけで収益を上げるには長期間を要するので、コンサルティングやサービス業務でそれをカバーすることで総合的に収益性を確保している。まさにTLOも大学発ベンチャーの一例であり、その成否は経営能力の如何にかかっている。
考えてみると、法人化後の国立大学にも同じことが言える訳で、研究活動の活性化による外部資金獲得に加えて、産学連携による共同研究、受託研究、それに、技術移転によるロイヤルティ収入などの外部資金をいかに確保できるかに大学の生き残りがかかっていると言えよう。本学でも、法人化へ向けて、地域や産学官との連携の新たな方策を模索する議論が始まっている。学内教職員各位のご協力と学外、とりわけ産業界からの本学へのご支援を心から期待したい。
なお、米国のTLOの発足当時の状況や東大のTLOである、CASTIの活動状況については、以下の著書が参考になる。

渡部俊也、隅蔵康一共著「TLOとライセンス・アソシエイト」(株)ビーケイシー、2002年。

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