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電気通信大学 共同研究センターメール No.33 巻頭言

大学における知的財産の創出と活用への期待

共同研究センター長 教授 森崎 弘

小泉首相のもとで本年2月に発足した知的財産戦略会議は、7月に「知的財産戦略大綱」を取りまとめました。その中には我が国の国際競争力を高め、経済を活性化するために知的財産を戦略的に活用するための具体的指針が示されています。その内容は多岐にわたりますが、とりわけ大学等における知的財産創出の推進が大きな柱になっていることが特徴です。これを受けて、文部科学省は平成15年度の概算要求に「大学知的財産本部整備事業」を計上し、モデル事業として40程度の国公私立大学にこれを設置する計画です。ここでは、「大学知的財産本部」の目指すものを説明し、併せて本学の取るべき対応について述べてみたいと思います。
これまで日本の大学における研究成果は学術論文という形で公表され、特許という形で権利化することはあまりなされてきませんでした。色々な理由はありますが、これまでは大学の研究者が特許を取るメリットがあまり無かったことが大きいと思われます。上記の知的財産戦略大綱ではこの点に関して、特許を学術論文並みに業績として評価し、科学研究費補助金等の公募型研究費の配分に考慮することや、発明者個人への適切な発明報償金の支払いを可能にするようなインセンティブの付与が提言されています。現状では国立大学は法人格を持っていませんので、大学の教官の発明は国有か個人有になりますが、国有になるものはごくわずかです。本学関係でも国有特許になっているものは出願中のものを含めて過去に2件あるのみと聞いています。ところが独立大学法人になると、教官の職務に関わる発明は原則としてすべて法人有になることが予想され、それらの特許を一元的に管理することが大学にとって重要な課題となります。今回計画されている「大学知的財産本部」は、知的財産が独立大学法人のもとで一元管理されることを前提に、その体制を整備するために設置されるものと考えられます。特許を中心とする知的財産の管理やそれをもとに行われる技術移転を効果的に行うことなどは、大学の教官や事務官で対応することは不可能であるため、このような仕事に慣れている弁理士や企業の知財部門経験者などの専門家が必要となります。したがって、計画されている「大学知的財産本部」には学外からの優秀な人材を確保することが必須となります。技術移転に関しては、本学には(株)キャンパスクリエイトが有効なコーディネータの役割を果たしてきています。現在、キャンパスクリエイトを承認・認定TLOにするための準備を進めており、これが実現すればこれまで以上に大学と強く連携して技術移転を推進できるものと期待されます。
本年度中に「大学知的財産本部」の公募が行われる予定ですので、本学としても共同研究センターが中心となって応募のための原案作りを早急に始める必要があります。本学は、知財分野で活躍している優秀な人材を輩出している、という点では日本有数であると思われます。幸い、本学出身者からなる弁理士グループ等も非常に協力的であることから、本学に大学知的財産本部を設置する際に大きな力となることが期待されます。最大のポイントは、知的財産の取得・管理・活用を戦略的に実施するための体制構築に、本学としての新しい発想を導入できるかどうかにあります。その実現にむけて関係各位ご協力を何分よろしくお願い申し上げます。

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