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電気通信大学 共同研究センターメール No.32 巻頭言

センター長就任の挨拶にかえて

共同研究センター長 教授 森崎 弘

本年4月から共同研究センター長を仰せつかりました。共同研究センターは本年で丸10年を迎えました。これまでの関係各位のご努力によって着実に成果を上げてきており、今年度は念願のセンターの増築が行われます。来年3月には、センター増築の竣工式と10周年記念行事を併せて行う計画を立てています。また、本年5月からは、横須賀市のご好意で、横須賀リサーチパーク(YRP)内にあるベンチャー棟に本学共同研究センターの分室を開設できました。ご承知のように、YRPはモバイルを中心とした情報通信分野の研究開発のメッカであり、すでに本学教官による5件のプロジェクトがスタートしようとしています。共同研究の実施件数についても、前号のセンターメールに三木前センター長がお書きになっていたように順調に推移しており、昨年度66件に達しています。
しかしながら、このような実績をもってしても、これから始まろうとしている国立大学の独立法人化の荒波に漕ぎ出す電気通信大学丸の前途を産学連携の面から占うと、多難と言わざるを得ません。先般、本学では学長の諮問で実施された、「大学に民間的発想の経営手法導入に関する調査研究」についての報告会が開催されました。従来、国立大学にはなかった、民間的経営手法の導入が法人化に伴って求められようとしています。さて、その報告の中で、本学の収支の現状を他大学と比較された結果を見せられて愕然としました。東工大との比較では、支出の欄で人件費を比較すると東工大の教官の規模が約3倍であることが分かります。それに対して、収入の欄の産学連携事業収入(共同研究、受託研究)は本学の14倍、奨学寄付金も12倍です。東工大では現時点で年間授業料収入に近い産業界からの収入があることになります。それに対して本学では産学連携収入は学生の納付する額の1割程度にすぎないことが分かりました。このままの状態で国費補助率が引き下げられ、私立大学並みになると学生の授業料は私立大学よりかなり高くなるというショッキングな結論が出されています。
このような現状を打破するには、産学連携に対する取組み姿勢を質的に転換する必要があるように思います。まず第一に、これまでは産業界からのアプローチを受けてやや受身的に行われていた共同研究を、大学側から積極的にシーズを発信して産業界からのレスポンスを待つ形に変えていく必要があるでしょう。また、第二に、共同研究の数に加えて、大型の共同研究を実施できるように戦略を練る必要があるように思います。第三には、共同研究の結果生まれた技術を事業化に向けて育てるインキュベーション機能を大学内に設けて、共同研究があらたな共同研究を生む相乗効果を引き起こすような仕掛けを作る必要があるでしょう。このような改革は、共同研究センター関係者だけではもとより遂行できる訳ではなく、全学的なサポートが必要です。それには、まず上記のような危機意識を共有することが大前提であると思われます。
本センターメールは主として学外に配信されていることは重々承知していますが、学内の先生方にも配布されていることを考慮して、産学連携の重要性について改めて述べさせていただきました。共同研究センターへのこれまで以上のご支援をよろしくお願い申し上げます。

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