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電気通信大学 共同研究センターメール No.22 巻頭言

産学連携はなぜ必要か

共同研究センター長 教授 梶谷 誠

1999年6月29日に発表された学術審議会の答申「科学技術創造立国を目指す我が国の学術研究の総合推進についてー「知的存在感のある国」を目指してー」は、これからの大学の目指すべき三つの目標を掲げています。その一つが「社会貢献」であり、そこには学術審議会としては始めて「産学連携」を明確に打ち出しています。そのため、共同研究センターの役割が一層重要になったとの認識から、臨時のセンター長会議も召集され、共同研究の一層の推進、TLOなどの設立による大学の知的資産の社会への還元などの推進が要請されました。
私は、本ニュース20号巻頭の「センター長就任の挨拶」において、「ボーダレス化時代の大学の在り方」を問題提起しました。そこでは、次のように述べています。[今後ますます社会のボーダレス化が進むであろう。例えば、大学と大学、大学と企業、企業と企業、国と国の間の垣根を低くした相互乗り入れによる、相互補完、相互作用、相互批判によって、常に活力を維持しなければ生き残れない。このような時代の大学の究極の姿とは?]産学連携の流れは、大学と社会のボーダレス化を象徴する流れであり、今後の大学の生きる道と捉えることができるでしょう。
なぜ産学連携が必要なのか、なぜボーダレス化が進むのか?従来型の社会では、国も企業も全ての必要な機能をその組織の中で完結させ、入力と出力だけを外に向けて開け、自己目的の達成と自己増殖を図ってきました。20世紀末に噴出した、様々な矛盾の全ては、この閉じた組織の弊害として説明できるとさえ思えます。このような社会の閉塞状態を脱却するには、組織の壁を破り、相互乗り入れを図る以外に道はないことに気がついたがゆえに、さまざまな場面でのボーダレス化が進んでいるのだと思われます。
大学は教育と研究を外からの干渉を受ずに自由に行い、産業界はそのアウトプットを利用するという図式が、日本における産学間の犯すべからざる不文律でありました。しかし、何か問題が発生すると、互いに責任をなすりあい、不毛の論争を続けるだけで、なんら実のある解決を見いだせないままいたずらに時が流れるというよくあるパターンに陥る危険を抱えています。例えばもし、人材の養成は社会全体の責任であるという考えに立脚するなら、大学における教育に産業界が協力することは社会活動をする組織の責任であり、一方、大学は大学だけで人材の養成をできるなどという傲りを捨て、産業界に大学教育への参画を依頼するという姿勢があれば、新しい教育への展望が拓けるのではないでしょうか。最近、共同研究センターが窓口になって本学でも部分的に開始したインターンシップ制度についても、まだまだ企業側も大学側もその意識に大きなブレがあり、制度の定着までには至っていないのは、その根本理念のコンセンサスが得られていないためと思えます。
電気通信大学も、産学連携のよりよい発展に向け、共同研究センターを中心に活動していきます。そのためには、まず本学の内容を知ってもらうための窓をいろいろな方向に向けて開けていきたいと思っています。大学人の自己満足に陥ることなく、社会の人々に分かりやすい、理解してもらえる方法で情報開示することが基本と考えています。本学の全ての研究室がホームページを開設し、世界中から見られるようになること(見たいような内容があること)が、社会貢献の第1歩ではないでしょうか。

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