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産学官連携ニュース No.27   Web版

発行:2015年12月25日

目次

第101回研究開発セミナー報告

報告:産学官連携センター 客員教授 久野 美和子

 第101回研究開発セミナーは平成27年11月30日(月)、「ヘルスケアー・イノベーション」をテーマに、80周年記念会館で開催しました。参加者は89名でした。
 健康長寿国家において健康寿命の延伸は個人・地域におけるHQOLの実現や経済的負担軽減の観点からも必須の課題となっております。健康寿命の延伸のためには、医療・福祉・介護分野の充実のみならず、「生涯を通じた健康づくり、そのためのヘルスケアサービス・環境整備」へのシフトが急務になっております。これらの認識を踏まえて、講演の第1部では、同分野の先端研究・新たな仕組みづくりで活躍している「産業技術研究所」、「医療パラダイムシフト推進協議会」(ソニー、NTT-IT)、「電気通信大学」からの先進的な取り組みを紹介するとともに、第2部では、講師、参加者のざっくばらんな意見交換会を行い、同分野の発展を目指した人財ネットワークの構築が図られました。
 本セミナーは多くの参加者の方々から「有意義だった」との評価を受けましたが、その重要なポイントは、「ヘルスケアーと総合コミュニケーション科学」の概念(考え方)を軸に、同分野の社会的ニーズ、それに応える大学や研究機関からの研究開発や各種計測・評価サポート、産業界からのICTを活用したライフコースサポート(実践・ビジネス)について、講演者の方々が、総合的な観点、かつ、専門性に優れた深い理論と実践(取り組み)について話され、一貫したストーリー(概念整理→社会的ニーズ→研究・技術開発→ビジネス化)として示すことが出来た事です。
 電気通信大学の産学官連携センター長・中嶋信生氏の開会挨拶の後、
第一番目の講演では、電気通信大学の 梶谷 誠 前学長が「ヘルスケアーと総合コミュニケーション」について話されました。「全ての人々が心豊かに暮らせる社会」とは、「人と人、人と社会、人と自然、人と人工物との間に豊かなコミュニケーションがある社会(高度コミュニケーション社会)」であり、それは、「総合コミュニケーション科学(注)」によって実現が可能となる。総合コミュニケーション科学を活用し、「超高齢化社会を強みに変える「ヘルスケアーイノベーション」を推進することの重要性(科学技術のパラダイムシフト)を説かれました。
(注)@コミュニケーションの視点から対象を観察し、考察し、行動することにより新しい知見を探索する。Aコミュニケーションによって新しい知見を探索する。
 第二番目の講演では、産業技術総合研究所イノベーションコーディネータの 三宅 正人 氏が「予防医学分野における非医療サービス技術の橋渡し」について話されました。
非医療サービスが個人の健康維持に貢献し、国民医療費の削減につながるためには、疾患予防や健康増進サービスの目的、対象、エンドポイントが消費者に届けられなければならない。こうした観点から、「技術の橋渡し」は極めて重要であり、その答えを探るために、「ヘルスケアー・サービス効果測定コンソーシアム」を11月に設立しました。この場に産学官の多くの知識を集積し、イノベーションを起こす場に出来るように努めるとの「提案と呼びかけ」がありました。
 第三番目の講演では、ソニーコンピュータサイエンス研究所の桜田氏が「保健と医療のパラダイムシフトに向けて」について話されました。 未来の保健と医療の姿を描くには「生命とは何か」についての本質的な理解が不可欠であり、この講演で「新たな生命像に基づく保健と医療の未来の姿」を提案されました。人の病気は、ゲノム/遺伝子を原因とする染色体異常/単一遺伝子疾患と生活習慣病に分けられます。人の一生(ライフコース)とは後戻りできない階段を上るようなものであり、人が健康を維持し、病気にならないようにするには、人の心と身体の変化を予測し病気を予防すること、即ちライフコースをマネージすることです。予測(推論)をするには、「予防の保健サービスのデータ・プラットホーム」や「トランスレーショナル・リサーチのプラットホーム」「細胞のライフコースの追跡」等により、ライフコースデータの蓄積と構造化が必要となります。これらのアンビエント情報については、あくまでも本人の選択の自由や挑戦を阻害しないかたちで利用する仕組みを作る必要があります。また、仲間の間でのコミュニケーションを促進する形でアンビエント情報を用いることで、人の発見的な秩序形成の枠組みの中で問題を解決することが可能となることを強調されました。
 第四番目の講演では、NTTアイティ潟wルスケアー事業部の坪井俊明氏が「ICTを活用したヘルスケアの最前線」について話されました。医療健康分野でのICTの活用の事例(遠隔地でも保健指導が可能な「ひかり健康相談のサービス概要とサービスイメージ」「バイタルセンサによる簡易認証やバイタルデータ登録」「岩手県や北海道・各地域での実証」報告が行われ、うまくいっている理由として、高齢者の「予防したいという意欲、時間がある」との理由に加え、大きな動機付けは、「コミュニティ形成」であるとのお話でした。多くの方が参加する・効果の出る「介護事業の進め方」については、「自主グループ活動」(地域のリーダーを中心に行う)が参加意欲の点でも、介護費用が減少する効果の点でも良いとの結果が報告されました。今後重要となる「在宅医療」についても、メンタル・フィジカルの融合ヘルスケアーが重要であること、また、参加者の質問でも「地域でのコミュニティ形成」への関心が高く、その重要性が話されました。 第五番目の講演では、電気通信大学大学院情報理工学研究科綜合情報学専攻の高玉圭樹教授が「健康と幸せを提供するエージェント」について話されました。これからのケアサポートは、本人の「健康」に加えて「幸せ」を享受できるようにすること、そのための重要なファクターとして安定的な睡眠があります。安定的な睡眠をとるための科学的根拠に基づくライフログ的睡眠段階(蓄積された睡眠データ)の応用(睡眠導入:音楽、深い睡眠:入浴、眠れる寝具)、これらを支えるモニタリングエージェントの開発と性能について、お話されました。Well-being technologyがこれからのヘルスケアーの重要な鍵となりそうです。
 最後の〆は電気通信大学産学官連携センター副センター長 田村 元紀 氏から行われ、産学官連携・融合のもと、イノベーションをどんどん起こしていきましょうとのメッセージがありました。

セミナーの様子
第101回研究開発セミナーの様子

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お知らせ

産学官連携センター運営委員会

 平成27年12月9日(水)、東7号館4階415室において第38回産学官連携センター運営委員会が以下の議題で開催されました。

  1. 平成28年度事業経費要求について
  2. 特任教員の任用について
  3. 電気通信大学発ベンチャーの認定について
  4. インキュベーション施設使用について
  5. 共同研究及び受託研究の受入について
  6. その他報告事項

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対外活動と社会貢献

TAMA協会 地域イノベ・技術連携交流会

 平成27年10月9日(金)、第5回目の表記交流会が中野サンプラザで開催されました。本学はTAMA協会に大学シーズ集に紹介したいただいた10の研究のポスターを展示しました。今田コーディネーター、安達特任教授、田口特任教授が出席し企業との面談に対応しました。

ふちゅうテクノフェア

 平成27年10月16日(金)、17日(土)、ルミエール府中において、第26回目になる府中工業技術展「ふちゅうテクノフェア」が開催され、本センターも上記のポスターを中心に展示に参加しました。今田コーディネーター、森倉特任教授、田口特任教授が支援しました。今年は昨年に比べて入場者が少なかったように感じました。

新技術創出交流会

 平成27年10月27日(火)、立川のパレスホテル立川において東京都中小企業振興公社の主催で表記交流会が開催されました。2つの講演の他多摩地域の企業が展示をしました。中嶋センター長、水野コーディネーター、田口特任教授が参加しました。

ビジネスフェア from TAMA

 平成27年11月6日(金)、例年の新宿NSビルから会場を変更して東京ドームプリズムホールにおいて、西武信金主催の第16回目になる表記展示会が「新たな発信地から未来を創造 〜この変革期をビジネスチャンスに〜」テーマに開催されました。本学も例年通りキャンパスクリエイトとともに展示参加しました。

ビジネスフェア from TAMA の様子
ビジネスフェア from TAMA の様子

第5回武蔵野エリア産業フェスタ

 平成27年11月10日(火)、吉祥寺東急インにおいて、第5回武蔵野エリア産業フェスタが開催されました。このイベントは武蔵野市商工会議所、三鷹商工会、小金井市商工会の3者が武蔵野地区の製造業・情報通信産業の企業を結集したもので、今回は44社の企業と本学を含む12の支援団体が参加しました。今年は本学の産学連携の紹介の他、昨年好評で是非にと依頼された情報システム学研究科情報メディア学専攻の 末廣 尚士 教授の研究室がハンドベルを演奏する「ベアリング」ロボットの実演を行いました。今田コーディネーター、水野コーディネーター、田口特任教授が支援しました。

ベアリング
武蔵野エリア産業フェスタでのベアリング

産業交流展2015

 平成27年11月18日(水)〜20日(金)の3日間、東京Big Sight において表記展示会が開催されました。この展示会は首都圏の中小企業の技術を紹介するもので、本学の教員が関与しているプロジェクトなどが展示されました。田口特任教授が視察しました。

リスクマネジメント研究会

 平成27年11月24日(火)、コラボ産学官プラザ in TOKYOにおいて表記研究会が開催され、田口特任教授が参加しました。今回は「大学における安全保証貿易管理」をテーマにCISTECから最新の状況が報告された後、大学人の立場からの議論をしました。

経営改善セミナー「介護支援ロボット開発・普及の課題」

 平成27年11月20日(金)、たましんWinプラザ多摩センターにおいて、日本介護事業連合会の主催で表記セミナーが開催されました。今田コーディネーター、水野コーディネーター、田口特任教授が参加しました。

産学連携学会秋季シンポジウム

 平成27年12月1日(火)、東京医科歯科大学M&Dタワー鈴木章夫記念講堂において産学連携学会と東京医科歯科大学の合同主催により「オープン・イノベーション 〜企業文化変革への挑戦〜」をテーマに表記シンポジウムが開催され、本学から田口特任教授が参加しました。先進的な取り組みをしている企業から自社の取り組みについて報告があった後、パネルディスカッションで議論がなされました。参加者は129名でした。

第21回国際ロボット展2015

 平成27年12月2日(水)〜5日(土)の4日間、東京Big Sight において隔年に開かれる表記展示会が開催されました。本学からの出展はありませんでしたが、田口特任教授が視察しました。今回の展示会は、出展企業・団体数計:446社・団体/出展小間数:1,882小間と大変大がかりなイベントで,入場者(4日間で12万人以上)でごった返していました。サービスロボットゾーンでは多くの大学や研究機関から最新のロボットが展示され、実用化に近いものもあり、期待されます。

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