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産学官連携ニュース No.10   Web版

発行:2011年9月25日

目次

第24回国立大学共同研究センター専任教員会議報告

産学官連携センター専任准教授 田口 幹

 第24回国立大学共同研究センター専任教員会議は、9月1日(木)、2日(金)に、当番校である鳥取大学により鳥取市の武雄温泉ハイツで開催されました。
 本会議の公式参加者は、文部科学省より1名、鳥取大学を含む48大学71名でした。会議規則に基づき、本年度当番校の鳥取大学産学・地域連携推進機構の 長島 正明 准教授を議長に選出した後、幹事会を代表して本年度の幹事長である信州大学 松岡 浩仁 准教授から、今回の専任教員会議の趣旨説明がなされました。今年度も、本来の会議の趣旨に立ち返り、専任教員間での情報交換を最大の目的として、時間をかけて議論をすることとなりました。
 第1日目の会議は、鳥取大学 岸田 悟 副学長から開会のご挨拶に続き、全体会として文部科学省科学技術・学術政策局産業連携・地域支援課 大学技術移転推進室 井上 弘亘 専門官より、基調講演として「産学官連携の現状と今後の展望」と題して、講演頂きました。
 その後、「これからの専任教員会議」、「専任教員の教育的役割」、「金融機関との連携の在り方」、「産学連携の戦略的推進」、「知的財産の価値評価と自立的な運用」の5つの分科会に分かれて、よりつっこんだ報告と議論が重ねられました。3時間を超える議論の後、分科会は終了しました。まだ議論のつきない分科会もありましたが、夕刻からは会場を移して情報交換会を行い、和やかな雰囲気の中、さらに意見交換を深めて第1日目を終了しました。
 第2日目には、再び全体会が開かれ、各分科会座長から、分科会報告が行われ、情報共有が図られました。その後全体討議として専任教員メイリングリストについて議論しました。最後に、次期幹事および幹事長を選出し、来年度の開催当番校を山梨大学に決定しました。
 前回の会議から、十分な分科会の時間を確保するためと、専任教員間の懇親の時間を十分に取るため、温泉に泊まり込んで、専任教員会議を実施しました。今年も非常に好評であったため、次年度以降も今年以上に十分な時間を取って、情報交換ができる専任教員会議の開催を期待することが確認されました。
 会議終了後の午後には台風の接近という悪天候の中、オプショナルツアーとして、鳥取大学乾燥地研究センターと鳥取砂丘ジオパークセンターの視察が行われ、20名ほどが参加しました。

副学長のご挨拶
鳥取大学 岸田 悟 副学長のご挨拶

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中国シンセン虚擬大学園と電通大が手を結び、新たな産学官連携モデル構築へ

産学官連携コーディネータ/インキュベーションマネージャ 阿部 博文

 このほど、電気通信大学では中国シンセン市深港産学研基地主任の張克科(ちょう・こくか)先生を本学産学官連携センターの客員教授としてお迎えすることになった。着任を記念し「産学官連携におけるイノベーション」と題して張先生が2011年6月24日(金)の午後、電気通信大学産学官連携センター415研修室で記念講演を行った。以下はその抄録である。当日の通訳は、キャンパスクリエイトの産学連携コーディネータ・李瑩玉(り・えいぎょく)さんが務めた。
張先生の講演の主旨は、中国における産学官連携の紹介と今回の着任を機にしたこれからの日中産学連携への期待である。講演は次の3部構成で行われた。第1部は国家の教育方針から創新型国家建設までの国策、第2部はシンセン産学研連携に対する探索及び実践、そして第3部は日中産学研連携についてである。順を追って要点を報告する。
●中国の産学連携は「創新型戦略連携」の段階へ
 第1部では中国における産学連携の歴史的経緯を説明。中国では1980年代から産学研(中国では産学官を産学研と呼ぶ)活動がスタートした。90年代になると地方政府が産学研積極的に関わるようになり、2000年代からはシンセン市が全国のモデル地区となって教育・研究・経済活動を一体的に進められた。2010年代のいま、知識革新(イノベーション)は国家の競争力強化にとって不可欠の要素と位置づけられるようになり、政府・大学・企業は従来の「連携体」から一歩進んだ「創新型戦略連携体」を形成するまでになっている。この戦略連携体における最重点項目御がイノベーション人材の育成である。将来を見据え高度専門人材の育成に力を入れているという点では、日本の電通大等が推進しているスーパー連携大学院と共通している。
●シンセン虚擬大学園の現状
 第2部ではシンセン市の産学連携活動について、シンセン虚擬大学園の事例を通じて紹介。北京大学・香港理工大学・南京大学・青華大学・武漢大学など中国の主要大学・地方大学計58校が広大で美しく整備された虚擬大学園キャンパスに進出している現状を写真や図表で示した。次に、同大学園の目的が、ハイレベルの人材育成・インキュベーションによる技術移転と産業化の促進・海外から企業や人材を誘致し知の融合の促進・重点プロジェクトの推進・ポスドク就職支援等にあることを紹介。研究者と企業との親和性を図る具体例として「土曜日エンジニア」が紹介された。これは教育機関の研究者が土曜日になると企業に出向き、企業のエンジニアと共に具体的な課題解決に当たるという地道な活動である。こうした「点と点」の努力がやがてシンセン市の産学研イノベーション連盟という「線」に成長し、さらには産学研連携の地域モデルという「面」へと発展していると述べた。この発展過程で、日本の産学連携コーディネータ制度が大学・企業・行政という異なるセクターの協働を引き出す上で大いに参考になったという。活動資金の中心は行政の予算でまかなわれ、企業が力をつけ始めると、政府と企業の共同出資や投資へと間口を広げているという。人材育成の結果、多数誕生したポスドクの次のキャリアを開拓するため、シンセン市内には47のポスドク・ステーションが設けられている。このステーションでは1人のポスドクに対して大学と企業それぞれに「ポスドク指導教員」が存在し、産学両面からポスドク人材のキャリア開発を推し進めている。
●これからの日中産学連携に向けて
 第3部では日本と中国のこれからの産学連携活動のあり方について張先生は次の8項目を提案した。
(1)日中産学官連携のプラットフォームの構築: 互いのニーズを相互に理解・共有するための基盤づくり。
(2)企業を巻き込んだ技術移転・連盟の設立: 日中の企業と大学が連携できる共同体づくり。
(3)企業人材に向けた大学教育プログラムの提供: 企業の中核的な技術者を対象に1〜2週間程度の期間、集中的に最新技術やマネジメント知識を伝えるプログラムを開発・提供。
(4)企業内ラボ開設の促進: リーダー的な企業の中に研究室を設ける試み。
(5)ポスドクの国際交流ネットワーク構築: ポスドクが国の枠を超えて交流できる場の提供。
(6)専門技術と知的財産の連携強化: 研究活動と知財の融合を促進するプロジェクト。
(7)日中両国の大学と企業が相互に友好的に連携できる独自モデルの確立。
(8)基金の設立:上記の活動を支えるには資金が必要。そこで新しいファンドの設立準備を進めたい。
これから張先生は電気通信大学の客員教授として日中産学連携のかけ橋としての活動を活発化させたいと意欲を示した。

張先生の講演風景
張先生の講演風景

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第84回研究開発セミナー報告

産学官連携センター特任教授 桑江 良昇

 第84回研究開発セミナーは、「最新の無線を用いたセンサーネットワーク技術動向」をテーマに平成23年7月28日13:00より開催されました。聴講者は66名でした。
これからのユビキタス社会では、各種センサーが重要な役割を果たします。例えばスマートビルディング、電気・ガス・水道の自動検針、学童・お年寄りの見守り、気象データ・放射能分布測定、位置管理などを目的に、無線を用いたセンサーネットワーク技術が開発されています。今後、情報通信産業のあらたなビジネスチャンスとなることも期待されます。そこで本セミナーは、ZigBeeやその他の無線方式を用いたセンサーネットワークの我が国における技術動向、利用動向、ZigBee無線モジュールの使用方法、本学の取り組み等について4件の講演で構成しました。
 まず、株式会社ルネサスソリューションズ第二応用技術本部通信応用技術部パーソナルエリアネットワーク課課長佐藤 浩一氏より、ZigBeeアドホックネットワーク技術についてご講演いただきました。佐藤氏のご講演は、IEEE802.15.4 および ZigBee仕様の策定背景,ZigBeeメッシュネットワークの仕様と動作及びZigBeeのアプリケーション動向について話をしていただきました。IEEE802.15.4およびZigBee仕様は当初からアドホックネットワーク実現を目指して策定されてきたことが述べられました。ZigBeeスタック仕様はいくつかの改良の後、現在では多くのベンダから実装プラットフォームが提供され、全世界で標準化された仕様として実用化されてきていることが述べられました。また、ZigBeeアライアンスではアプリケーションプロファイル仕様の策定や認証試験制度のサポートも実施していることが紹介されました。参加者のアンケート結果においては、本講演はセンサーネットワークの重要な技術であるZigBeeの企画を理解する上で大変役に立ったという意見が多くよせられ、大変好評でした。
 次にインターニックス株式会社マーケティング7部1課課長北川隆之氏に「XBeeモジュールの機能と動作、開発キット・応用事例紹介」をお話し頂きました。XBeeモジュールは、IEE802.15.4というセンサーネットワークに適した小形で低消費電力な無線通信規格を適用した製品で、ZigBeeの通信方式と独自の通信方式を備えています。講演では、XBeeモジュールの特徴と使用方法、無線パケットのフォーマットなどについて説明していただくと共に、クラウドサービスと連携したデモ展示も行っていただきました。応用例についても、電力系を中心に、センサーとしての使用、あるいは電気製品の遠隔コントロールなどの具体例を示していただきました。XBeeは無線モジュールだけでなく、センサーやアクチュエーターと組み合わせた製品やネットワーク接続するための装置、各種ネットワークプロトコルなどの備えられており、単なる無線接続からネットワークシステムまで容易に構成できる特徴があることが示されました。
 休憩をはさんで後半の部では、始めに東京大学大規模集積システム設計教育研究センター准教授高宮真氏に「センサーネット向け低消費電力LSI回路技術の研究」をご講演頂きました。高宮氏のご講演では、センサーネット向け無線通信用LSI、LSIの低消費電力回路技術、及び無線センサノードの将来動向について述べられました。センサーネット向け無線通信用LSIの低電力化の進展に伴い、バッテリレス動作も可能になることを指摘しました。LSIの低消費電力回路技術のポイントとして、アナログ回路をなるべくデジタル回路で置き換えること、DC電力を消費するアナログ回路は頻繁にオフすること、デジタル回路はなるべく低電圧・低速動作させることが重要であることが指摘されました。また、エナジーハーベスト・無線給電などの自立給電がセンサノードの超小型化のキー技術であるとの考えを述べました。参加者のアンケート結果では、本講演が技術の将来動向についてよくわかる講演であったと好評でした。
 最後に電通通信大学総合情報学専攻教授市川晴久氏に、電波空間仮想化によるユビキタスネットワーク基盤をご講演いただきました。将来は豆粒のような無線タグがさまざまなセンサーに適用されます。そうなると空間に沢山の電波が飛び交います。それらはRoF技術などを用いてまとめて一か所に集約し受信するような装置が有効です。また、センサーが大きな役割を占める情報通信社会は、現在のインターネット社会とは異なったネットワークアーキテクチャが必要になるでしょう。端末からシステム構成、サービスまでを含めた将来のあるべき姿をお話しいただきました。
 以上の講演を通じて、センサーネットワークは、低消費電力無線回路、アドホックネットワーク技術、エネルギーハーベスト(自然界の僅かな変動から電力を取り出す)などさまざまな新技術で構成されると共に、産業界で実用化の関心が高まっていること、将来のインターネット後の時代にも重要な役割を担うことなどがわかりました。無線センサーネットワーク講習会の希望も多く寄せられましたので、今後企画を検討したいと思います。

84回セミナー
第84回研究開発セミナーの様子

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お知らせ

平成23年度 夏季インターンシップの実施状況

 平成23年度インターンシップは本年5月からインターンシップ対象年次である学部3年生、大学院1年生を対象にインターンシップガイダンスを実施し、インターンシップ希望学生の相談とマッチングを行ってきました。また企業・団体様には学生の受け入れをお願いして参りました。震災の影響にも関わらず多くの企業・団体様には電通大学生を受け入れて戴き大学として感謝しております。
今年度9月上旬時点での実施状況(速報値)は次の通りです。

  • インターンシップ履修予定 学生数 139名
  • インターンシップ受け入れ企業数  109社
  • 学生を派遣できた企業        85社
  • ギガビット研究会 会員企業募集中

     電気通信大学ほか国内外16大学が連携して、企業の製品設計現場で不足しているアナログ技術者養成のための「ギガビット研究会」を発足いたしました。詳しくは、下記の研究会HPをご覧ください。
    http://www.sangaku.uec.ac.jp/gigabit/index.html

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    対外活動と社会貢献

    テクノトランスファー in かわさき2011

     平成23年7月6日(水)〜8日(金)、川崎の神奈川サイエンスパーク(KSP)において表記展示会が開催され、田口准教授が参加しました。

    産業振興機関(産学連携事業)連絡会議

     平成23年7月6日(水)、東京都中小企業振興公社多摩支社において表記会議が開催され、比企コーディネータ、米山コーディネータ、田口准教授が参加しました。多摩地区のキャンパスのある7大学から担当者が出席し意見の交換をしました。

    第4回テクノルネサンス・ジャパン

     平成23年7月6日(木)、『第4回テクノルネサンス・ジャパン』(主催:日本経済新聞社,後援:文部科学省他)のオリエンテーションが、東5号館241号講義室において開催されました。テクノルネサンス・ジャパンは、学生が企業に研究開発して欲しい未来の夢を企業に提案するアイデア・コンテストです。会場には50名以上の学生が参加しました。学生は当企画の説明や研究開発型企業5社の担当者のプレゼンテーションに耳を傾けた後、会場の後方に設けられた企業ブースを訪れ一歩踏み込んだ情報交換を行いました。

    第179回IDEC産学交流サロン

     平成23年7月8日(金)、横浜の(財)横浜企業経営支援財団大会議室に於いて、震災で延期となっていた産学交流サロン「次世代センシング技術シリーズ」が開催され、本学から情報・通信工学専攻の沼尾教授が「RFIDタグを用いた居住者モニタリングシステム」と題して講演し、小島コーディネータと田口准教授が支援しました。

    UCONセミナー「事例で学ぶ大学間連携」

     平成23年7月11日(月)、12日(火)の2日間、新潟県の燕市の燕三条地場産業振興センターにおいて新潟地区の産学連携に関する大学間連携組織であるUCONのセミナーに田口准教授が招かれ、首都圏における大学所属の産学連携コーディネータのネットワークである「東京産学公ネットワーク会議(お節介倶楽部)」の活動について報告しました。また、2日目は燕地区の金属加工業者などを視察しました。

    ROBOTECH 2011

     平成23年7月13日(水)〜15日(金)、Big Sight において表記展示会が開催され、技術相談先である小川優機様が出展され、田口准教授が視察しました。

    イノベーションジャパン(大学見本市)2011

     平成23年9月21日(水)、22日(木)の2日間、恒例の有楽町の東京フォーラムに於いてイノベーションジャパンが開催され、本学からは知能機械工学専攻の 横井 浩史 教授が「個性適応技術を用いた医用福祉機器製品化に関わる研究開発」、内田 雅文 准教授が「バルーン魚ロボット」、産学官連携センターの黒崎 晏夫 特任教授が「赤外線透過ヒートシンクを用いたレーザ樹脂溶着技術」を出展しました。
     また、内田助教授が21日に横井教授が22日に新技術説明会として講演しました。

    横井研究室の展示
    横井研究室の展示

    内田研究室の展示
    内田研究室の展示

    Kア特任教授の展示
    Kア特任教授の展示

    バルーン魚ロボットのデモ飛行
    バルーン魚ロボットのデモ飛行

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